休職中の社会保険料はどうなる?会社負担・本人負担の扱いをわかりやすく解説【2026年版】
従業員が病気やケガ、メンタルヘルス不調などで休職する場合、給与が支払われなくても社会保険料の支払いは続きます。会社にとっても本人にとっても負担になりやすいこのテーマについて、基本ルール・金額の目安・実務的な対応方法を整理しました。
この記事で分かること:
- 休職中も社会保険料が発生する理由
- 会社負担分・本人負担分それぞれの扱い
- 本人負担分の回収方法(実務パターン3つ)
- 傷病手当金と社会保険料の関係、育児休業との違い
休職中も社会保険料は発生する
社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、雇用関係が続いている限り被保険者資格が継続します。休職中であっても被保険者であることに変わりはないため、保険料は通常どおり発生します。
ここで重要なのが、給与がゼロになっても保険料の金額は変わらないという点です。社会保険料は「標準報酬月額」をもとに計算されますが、標準報酬月額は休職開始時点で決定されている金額がそのまま継続適用されます。給与が支払われていないからといって、自動的に保険料が下がることはありません。
標準報酬月額の仕組みや月々の保険料額の目安は「社会保険料かんたん計算ツール」で確認できます。
なお、雇用保険料は実際に支払われた賃金に対してかかるため、給与がゼロであれば雇用保険料もゼロです。社会保険料(健康保険・厚生年金)と雇用保険料は仕組みが異なる点に注意してください。
会社負担分の扱い
会社負担分(健康保険料・厚生年金保険料の各半額)は、休職中であっても会社が通常どおり負担・納付します。休職を理由に会社負担分が減額・免除されることはありません。
後述する育児休業中の社会保険料免除とは仕組みが異なる点に注意が必要です。傷病による休職には免除制度がないため、毎月の年金事務所への納付額は通常どおり発生します。
中小企業では、複数人が同時に長期休職に入るとキャッシュフローへの影響が無視できません。休職者が出た場合の保険料コストを把握しておくことが、経営計画上も重要になります。
本人負担分の扱い
本人負担分(健康保険料・厚生年金保険料の各半額)は、通常は毎月の給与から天引き(控除)して納付しています。しかし休職中は給与が支払われないため、給与天引きができません。
では本人負担分が消えるのかというと、そうではありません。被保険者資格が継続している以上、本人負担分も発生し続けます。
実務上は、会社が一旦立て替えて納付し、後から本人に請求する形になります。これが休職時に最もトラブルになりやすいポイントです。回収方法を事前に取り決めておかないと、後で「言った・言わない」の問題に発展しかねません。
本人負担分の回収方法(実務パターン)
パターン1:毎月振込で回収(最も一般的)
休職中の従業員に、毎月の本人負担分を会社指定の口座に振り込んでもらう方法です。最も広く採用されています。
- メリット:未回収リスクが低い、従業員も月々の負担を把握しやすい
- デメリット:毎月の案内・着金確認が必要で管理工数がかかる
実務上は、毎月「振込金額」「振込先口座」「振込期限」を明記した案内文書を従業員に送付します。振込が滞った場合の催促ルールも事前に決めておくとスムーズです。
パターン2:復職時に一括精算
休職期間中の本人負担分を会社が立て替えておき、復職後に給与から分割控除する方法です。
- メリット:休職中の従業員の金銭的負担が少ない、月々の管理がシンプル
- デメリット:復職せず退職となった場合の回収リスクがある
復職後に大きな金額をまとめて控除すると手取りが大幅に減ってしまうため、分割回数を事前に取り決めておきます(例:6ヶ月分割など)。なお、給与からの控除には労使協定が必要です。
パターン3:傷病手当金から充当(労使合意が必要)
傷病手当金を会社が一旦受領する形(受任者払い)にして、そこから本人負担分を控除した差額を本人に支払う方法です。
- メリット:回収漏れがほぼ発生しない
- デメリット:手続きがやや複雑、本人の同意(委任状)が必須
傷病手当金は本来「被保険者本人」に支給されるものです。会社が一旦受領するには、申請時に本人から委任状を取得する必要があります。傷病手当金の申請手続きについては「傷病手当金の手続きガイド」で詳しく解説しています。
休職前に取り決めておくべきこと
休職に入る前に、以下の内容を書面で合意しておくことを強くおすすめします。
- 社会保険料の本人負担分の回収方法(パターン1〜3のどれか)
- 毎月振込の場合:振込先口座、毎月の振込期限、振込金額
- 復職時一括精算の場合:分割回数の目安、控除開始月
- 復職せず退職した場合の精算方法
- 振込が滞った場合の対応(催促・遅延損害金など)
就業規則に休職中の社会保険料に関する規定を設けておけば、休職者ごとの個別合意を毎回取り交わす手間が減ります。労務管理クラウドを導入していれば、休職者管理・保険料計算・通知の自動化なども可能です。→「労務管理クラウド6選|中小企業向け機能・料金比較」
傷病手当金と社会保険料の関係
業務外の病気・ケガで休職した場合、健康保険から傷病手当金が支給されます。標準報酬月額の約2/3(約67%)が支給されるため、休職中の収入ゼロを完全に防ぎます。
傷病手当金は所得税が非課税であり、また直接本人の口座に振り込まれる場合は社会保険料も天引きされません。一見、満額が手元に入るように見えますが、実際にはそこから自分で社会保険料の本人負担分を支払う必要があるため、手取りはその分少なくなります。
具体例:標準報酬月額30万円の場合
| 傷病手当金(月額の目安) | 約 20万円(300,000 ÷ 30 × 2/3 × 30) |
| 社会保険料の本人負担(健保+厚年) | 約 4.4万円(東京都・40歳未満の概算) |
| 手元に残る金額 | 約 15.6万円(傷病手当金の約8割) |
※ 上記は概算です。正確な金額は加入している健康保険組合や年齢・都道府県によって変動します。
傷病手当金の支給額は「傷病手当金 支給額かんたん計算ツール」で確認できます。月額の社会保険料の目安は「社会保険料かんたん計算ツール」で確認できます。
休職中の家計を考える際は、「傷病手当金の支給額の約8割が実質的な手取り」という目安を覚えておくと判断しやすくなります。
育児休業との違い
同じ「会社を休む」でも、育児休業と傷病による休職では社会保険料の扱いが大きく異なります。
| 項目 | 育児休業 | 傷病による休職 |
|---|---|---|
| 会社負担分 | 申出により免除 | 通常どおり発生 |
| 本人負担分 | 申出により免除 | 通常どおり発生 |
| 給付金 | 育児休業給付金(雇用保険) | 傷病手当金(健康保険) |
育児休業中は、会社が「健康保険・厚生年金保険被保険者育児休業等取得者申出書」を年金事務所に提出することで、会社負担分・本人負担分の両方が免除されます。免除期間中も被保険者資格は継続するため、年金額の計算上も不利になりません。
一方、傷病による休職には同様の免除制度がありません。「育休のときは免除だったのに、なぜ傷病休職では免除されないのか?」と従業員から質問された場合は、「制度の根拠法令が異なるため」と説明することになります。
よくある質問
Q. 休職中に標準報酬月額は下がりますか?
A. 自動的に下がることはありません。標準報酬月額は直近の定時決定(算定基礎届)または随時改定の結果がそのまま適用されます。ただし、復職後に給与が大幅に変わった場合は、随時改定(月額変更届)の対象になることがあります。
Q. 休職中に40歳になった場合、介護保険料も追加で発生しますか?
A. はい。40歳の誕生日の前日が属する月から介護保険料が加算されます。休職中であっても同じ取り扱いです。本人負担分が増えるため、回収方法の見直しが必要になります。
Q. 本人負担分を回収できないまま退職された場合はどうなりますか?
A. 最後の給与や退職金がある場合は、そこから控除して回収できます(控除には労使協定または本人の同意が必要)。それでも不足する場合は民事上の債権として請求することになりますが、実務上は回収が困難なケースも少なくありません。休職前に書面で合意しておくことが最大の予防策です。退職時の手続きについては「退職手続きチェックリスト」をご参照ください。
Q. 休職期間が長引いて、傷病手当金の支給期間(通算1年6ヶ月)が終わったらどうなりますか?
A. 傷病手当金は終了しますが、雇用関係が続いていれば社会保険料は引き続き発生します。本人の収入がゼロになるため、本人負担分の回収はさらに困難になります。就業規則で休職期間の上限を定めておくことが重要です。
Q. 住民税はどうなりますか?
A. 住民税も給与天引き(特別徴収)ができなくなります。社会保険料と同様に振込で回収するか、市区町村に「給与所得者異動届出書」を提出して普通徴収(本人が直接納付)に切り替える手続きが必要です。
※ この記事は法令の一般的な解説であり、個別の労務相談については社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
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