傷病手当金の手続きガイド|申請方法・支給額・支給期間をわかりやすく解説【2026年版】
従業員が病気やケガで仕事を休まなければならなくなったとき、健康保険から支給される「傷病手当金」。制度の存在は知っていても、いざ申請が必要になると「いくらもらえる?」「会社は何をすればいい?」と迷う方が少なくありません。この記事では、傷病手当金の基本から申請手続きまでを、中小企業の総務・人事担当者向けにわかりやすくまとめました。
この記事で分かること:
- 傷病手当金の支給条件(誰がもらえるのか)
- 支給額の計算方法と具体的な金額の目安
- 支給期間(通算1年6ヶ月のルール)
- 申請に必要な書類と手続きの流れ
傷病手当金とは
傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の病気やケガで仕事を休み、給与が支払われない(または減額される)場合に、生活を支えるために支給される制度です。健康保険法第99条に基づく給付で、おおよそ給与の3分の2が支給されます。
ここで重要なのが「業務外」という点です。業務中や通勤途中のケガ・病気は労災保険の対象であり、傷病手当金は支給されません。傷病手当金は、プライベートでの病気・ケガ、あるいは業務と無関係の疾患が対象です。
また、傷病手当金は協会けんぽや健康保険組合の被保険者が対象です。国民健康保険の加入者(自営業者など)は、原則として傷病手当金の制度がありません。
支給を受けるための4つの条件
傷病手当金を受け取るには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 1. 健康保険の被保険者であること | 協会けんぽまたは健康保険組合に加入していること。国保は対象外 |
| 2. 業務外の病気やケガであること | 業務上・通勤途上のケガや病気は労災保険の対象 |
| 3. 仕事に就くことができない状態であること | 医師が「労務不能」と認めることが必要 |
| 4. 連続する3日間を含み4日以上休んでいること | 最初の連続3日間が「待期期間」となる |
待期期間(3日間)の考え方
傷病手当金が支給されるのは、連続して3日間休んだ後の4日目からです。この最初の3日間を「待期期間」と呼びます。
待期期間には以下の特徴があります。
- 有給休暇を取得した日も、待期期間にカウントできる
- 土日・祝日も待期期間にカウントされる
- 待期期間の3日間は傷病手当金の支給対象にならない
- 3日間は必ず「連続」していなければならない(飛び飛びの休みでは成立しない)
具体例:
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 |
|---|---|---|---|---|
| 休み(待期1日目) | 休み(待期2日目) | 休み(待期3日目) | 支給対象 | 支給対象 |
この例では、月〜水曜が待期期間、木曜日から傷病手当金の支給対象になります。
支給額の計算方法
傷病手当金の1日あたりの支給額は、以下の計算式で決まります。
1日あたりの支給額 = 支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 2/3
簡単に言えば、「過去1年間の平均月給を日割りにして、その3分の2」が1日あたりの支給額です。
なお、加入期間が12ヶ月に満たない場合は、「加入期間の各月の標準報酬月額の平均」と「協会けんぽの全被保険者の標準報酬月額の平均(30万円)」のいずれか低い方を基準に計算されます。
標準報酬月額の確認には「社会保険料かんたん計算ツール」をご活用ください。
具体的な計算例
例1:標準報酬月額が30万円の場合
- 1日あたり:300,000円 ÷ 30日 × 2/3 = 6,667円
- 月額換算(30日):約20万円
例2:標準報酬月額が20万円の場合
- 1日あたり:200,000円 ÷ 30日 × 2/3 = 4,444円
- 月額換算(30日):約13.3万円
おおよそ給与の3分の2が目安と覚えておくとわかりやすいです。
給与が一部支払われている場合
休職中に会社から給与の一部が支払われている場合、傷病手当金の日額と給与の日額の差額のみが支給されます。給与の日額が傷病手当金の日額以上であれば、傷病手当金は支給されません。
支給期間
傷病手当金の支給期間は、通算して1年6ヶ月です。
2022年1月の法改正により、以前の「支給開始日から暦日で1年6ヶ月」というルールが「通算1年6ヶ月」に変更されました。
「通算」とは、途中で出勤した日(傷病手当金が支給されない日)は期間にカウントされないということです。たとえば、体調が回復して一時的に復職し、その後再び同じ傷病で休職した場合でも、実際に支給された日数の合計が1年6ヶ月分に達するまで受給できます。
※ 2021年12月以前に支給が開始された傷病手当金については、改正前のルール(支給開始日から暦日で1年6ヶ月)が適用されます。
申請手続きの流れ(5ステップ)
ステップ1:従業員から休職の連絡を受ける
従業員から「病気(ケガ)で仕事を休みたい」という連絡を受けたら、まず医師の診断書を提出してもらいます。
あわせて、有給休暇を先に消化するかどうかを確認しましょう。有給休暇の付与日数や仕組みについては「有給休暇の付与日数とは?中小企業向けにわかりやすく解説」を参考にしてください。
ステップ2:申請書を入手する
「健康保険 傷病手当金支給申請書」を入手します。協会けんぽの場合は公式サイトからダウンロードできます。健康保険組合の場合は、組合に問い合わせてください。
申請書は4枚構成です。
| 枚数 | 記入者 | 内容 |
|---|---|---|
| 1〜2枚目 | 被保険者(従業員本人) | 申請期間、振込先口座、傷病の状況など |
| 3枚目 | 事業主(会社側) | 勤務状況、給与の支払い状況 |
| 4枚目 | 療養担当者(医師) | 傷病名、労務不能と認めた期間、症状の経過 |
ステップ3:各担当者が記入する
被保険者(従業員本人)が1〜2枚目を記入します。申請期間や振込先口座などの基本情報です。
事業主(会社側)が3枚目を記入します。出勤簿と賃金台帳をもとに、申請期間中の勤務状況と給与の支払い状況を正確に記入してください。
療養担当者(医師)が4枚目を記入します。傷病名、労務不能と認めた期間、症状の経過が記載されます。医療機関によっては文書料(数百円〜数千円程度)がかかります。
ステップ4:協会けんぽ(または健康保険組合)に提出
4枚すべてが揃ったら、郵送または窓口で提出します。申請は1ヶ月単位で行うのが一般的です。まとめて数ヶ月分を申請することも可能ですが、申請が遅れると従業員の生活に影響するため、毎月提出するのが望ましいです。
ステップ5:審査・支給
提出から支給まで、おおよそ2週間〜1ヶ月程度かかります。審査が完了すると「支給決定通知書」が届き、傷病手当金は被保険者本人の口座に直接振り込まれます(会社の口座ではありません)。
会社側(総務・人事)が対応すべきポイント
申請書の事業主記入欄を正確に記入する
事業主記入欄(3枚目)は、出勤日数や給与の支払い状況を出勤簿・賃金台帳に基づいて記入します。記入内容に不備があると差し戻しとなり、支給が遅れる原因になります。特に申請期間中に出勤日がある場合や、給与の一部が支払われている場合は、正確な記載が必要です。
休職中の社会保険料について
休職中であっても、健康保険料・厚生年金保険料は免除されません。会社負担分・本人負担分ともに支払いが必要です。
給与が支払われない休職期間中は、本人負担分を給与から天引きできないため、回収方法を事前に取り決めておく必要があります。
- 毎月、本人に振り込んでもらう(振込先・期日を明確にする)
- 復職時にまとめて精算する
- 傷病手当金の支給額から充当する(本人の同意が必要)
どの方法を採用するかは、休職開始前に本人と書面で合意しておくとトラブルを防げます。
有給休暇との調整
有給休暇を消化している期間は給与が支払われるため、傷病手当金は支給されません。実務的には有給休暇を使い切った後に傷病手当金に切り替わるケースが多いです。
なお、有給を使うか使わないかは従業員本人の判断です。会社が一方的に「有給を使い切ってから」と指示することはできません。
休職・復職を含む労務管理を効率化したい場合は、クラウド型の労務管理サービスの導入も検討してみてください。→「労務管理クラウド6選|中小企業向け機能・料金比較」
よくある質問
Q. パート・アルバイトでも傷病手当金はもらえますか?
A. 健康保険の被保険者であれば、雇用形態に関係なく対象になります。ただし、社会保険の加入条件を満たしていない(国民健康保険に加入している)場合は対象外です。
Q. うつ病などの精神疾患でも対象になりますか?
A. はい。業務外の傷病であれば、病気の種類に制限はありません。うつ病、適応障害、パニック障害、自律神経失調症なども対象です。医師が「労務不能」と認めることが条件になります。
Q. 退職後も傷病手当金を受け取り続けることはできますか?
A. 以下の2つの条件を満たせば、退職後も継続して受給できます。
- 退職日までに1年以上継続して健康保険の被保険者であったこと
- 退職日に傷病手当金を受給中である(または受給要件を満たしている)こと
なお、退職日に出勤した場合は「退職日に労務不能」の条件を満たさなくなり、退職後の継続受給ができなくなる点にご注意ください。
Q. 有給休暇を使い切ってから申請すべきですか?
A. 法律上、有給を先に消化しなければならないという決まりはありません。ただし、有給休暇中は給与が支払われるため傷病手当金は不支給となります。実務的には有給消化後に傷病手当金に切り替えるケースが多いです。
Q. 2回目の申請(再発・別の病気)はできますか?
A. 同じ傷病の場合は、通算1年6ヶ月の支給期間の範囲内で再度受給できます。まったく別の傷病であれば、新たに通算1年6ヶ月の支給期間がスタートします。
関連ツール:「通勤手当の非課税限度額 早見表ツール」もご活用ください。
※ この記事は法令の一般的な解説であり、個別の労務相談については社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
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