パート・アルバイトの雇用契約書の作り方|記載必須項目と注意点【2026年版】
パート・アルバイトを採用する際、「雇用契約書にはどんな項目を書けばいいの?」「正社員と何が違う?」「テンプレートはどこにある?」と迷う方は少なくありません。
パートやアルバイトであっても、労働条件の書面明示は法律上の義務です。さらに2024年4月の法改正で明示事項が追加されており、従来のテンプレートをそのまま使い続けていると法令違反になるおそれがあります。この記事では、2026年3月時点の法令に基づいて、雇用契約書の記載項目・作成手順・よくあるミスまでをわかりやすく解説します。
この記事で分かること
- 雇用契約書と労働条件通知書の違い
- 記載が必須の項目一覧と、パート・アルバイト特有の追加項目
- 2024年4月の法改正で追加された明示事項
- 雇用契約書の具体的な作成手順(5ステップ)
雇用契約書と労働条件通知書の違い
まず、「雇用契約書」と「労働条件通知書」の違いを整理しておきましょう。
| 項目 | 労働条件通知書 | 雇用契約書 |
|---|---|---|
| 法的な作成義務 | あり(労働基準法第15条) | なし |
| 交付形式 | 会社から労働者へ一方的に交付 | 双方が署名・押印 |
| トラブル防止効果 | 一定の効果あり | 双方の合意が記録に残るため、より高い |
法律上、会社に義務付けられているのは「労働条件通知書」の書面交付です。一方、「雇用契約書」には法的な作成義務はありませんが、労使双方が署名・押印するため、「言った・言わない」のトラブルを防ぐ効果が高くなります。
そのため、実務上は「雇用契約書 兼 労働条件通知書」として1枚の書面にまとめるのが一般的です。この方法であれば、法的義務を果たしつつ、トラブル防止の効果も得られます。本記事でも、この「兼用型」を前提として解説を進めます。
なお、2024年4月の法改正により、労働条件の明示事項が追加されています。従来のテンプレートをそのまま使っている場合は、後述の「2024年4月の法改正で追加された明示事項」を必ず確認してください。
記載が必須の項目(絶対的明示事項)
労働基準法では、雇用形態にかかわらず、以下の項目を書面で明示するよう義務付けています。これらは「絶対的明示事項」と呼ばれ、正社員・パート・アルバイト共通で記載が必要です。
| 項目 | 記載のポイント |
|---|---|
| 労働契約の期間 | 有期の場合は開始日・終了日を明記。更新の有無と更新基準も記載が必要 |
| 就業場所 | 実際に勤務する店舗・事業所名を記載。2024年法改正により「変更の範囲」も必要 |
| 従事する業務の内容 | 「接客」「レジ業務」「事務補助」など具体的に。こちらも「変更の範囲」の記載が必要 |
| 始業・終業の時刻 | シフト制の場合は「シフトにより決定」と記載し、基本パターンを示す |
| 休憩時間 | 6時間超なら45分以上、8時間超なら60分以上。勤務時間に応じて記載 |
| 休日 | 週の休日数や「シフトによる」旨を記載。少なくとも週1日または4週4日以上 |
| 休暇 | 年次有給休暇の付与日数を明記。パート・アルバイトも対象であることに注意 |
| 賃金 | 時給額、計算方法、締切日、支払日、支払方法(銀行振込など)をすべて記載 |
| 退職に関する事項 | 自己都合退職の申出期限(例:30日前まで)と、解雇の事由を記載 |
| 昇給に関する事項 | 昇給の有無。具体的な金額でなく「有・無」の記載でも可 |
休暇の欄には、年次有給休暇について記載する必要があります。パート・アルバイトであっても、勤続6ヶ月以上かつ出勤率8割以上の条件を満たせば有給休暇が付与されます。付与日数の詳しい計算方法は、「有給休暇の付与日数とは?中小企業向けにわかりやすく解説【2026年版】」で解説していますので、あわせてご確認ください。
パート・アルバイト特有の記載事項(パートタイム・有期雇用労働法)
前述の共通項目に加えて、パートタイム・有期雇用労働法(第6条)では、パート・有期雇用の労働者に対して追加で4つの項目を文書で明示するよう義務付けています。
- 昇給の有無 ― 昇給制度があるかどうかを「有・無」で記載
- 退職手当の有無 ― 退職金制度の有無を「有・無」で記載
- 賞与の有無 ― 賞与(ボーナス)制度の有無を「有・無」で記載
- 相談窓口 ― 雇用管理に関する相談ができる担当者の氏名・役職・連絡先を記載
特に見落とされがちなのが4番目の「相談窓口」です。「総務部 山田太郎(内線XXX)」のように、具体的に記載する必要があります。
これらの4項目を明示しなかった場合、10万円以下の過料(行政罰)の対象となります。正社員の雇用契約書をそのまま流用しているケースでは、この4項目が抜けていることが多いため、必ず確認しましょう。
2024年4月の法改正で追加された明示事項
2024年4月1日施行の労働基準法施行規則の改正により、以下の明示事項が新たに追加されました。この改正への対応がまだの企業は、早急にテンプレートの見直しが必要です。
全労働者が対象の追加事項
- 就業場所・業務内容の「変更の範囲」 ― 雇入れ直後の場所・業務だけでなく、将来的に変更される可能性がある範囲を明示。例:「就業場所:○○店(変更の範囲:会社が指定する県内の店舗)」
有期契約の労働者が対象の追加事項
- 更新上限の有無・内容 ― 契約更新の上限がある場合、その旨と上限回数または通算期間を明示。例:「更新上限:通算5年まで」
- 無期転換申込権に関する事項 ― 有期契約が通算5年を超えた場合に発生する無期転換申込権について、無期転換後の労働条件を明示
パート・アルバイトの多くは有期契約であるため、3つすべてが該当するケースがほとんどです。改正前のテンプレートをそのまま使い続けていると、これらの記載が欠落し、法令違反となる可能性があります。
雇用契約書の作成手順(5ステップ)
ステップ1:雇用条件を整理する
まず、採用するパート・アルバイトの勤務条件を整理します。最低限、以下の項目を事前に決めておきましょう。
- 契約期間(有期の場合は開始日・終了日・更新の有無)
- 勤務日数・曜日
- 勤務時間帯(始業・終業・休憩)
- 時給額・交通費の有無
- 業務内容
ステップ2:テンプレートを用意する
ゼロから作成するよりも、厚生労働省が公開しているモデル様式を活用するのが最も確実です。モデル様式は2024年法改正に対応しており、必要な記載項目があらかじめ網羅されています。
厚生労働省「労働条件通知書」のモデル様式は、以下のページからダウンロードできます。
※ 「短時間労働者・有期雇用労働者用」のモデル様式を選択してください。
ステップ3:自社の条件を記入する
ステップ1で整理した条件をテンプレートに記入していきます。記載例を一部ご紹介します。
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 就業場所 | ○○店(東京都○○区○○1-2-3) (変更の範囲:会社が指定する都内の店舗) |
| 業務内容 | レジ業務、商品陳列、店内清掃 (変更の範囲:販売に関する業務全般) |
| 始業・終業 | シフトによる(基本パターン:10:00〜15:00) 休憩なし(6時間以内の勤務のため) |
| 賃金 | 時給 1,200円(交通費:月額上限15,000円まで実費支給) 締切日:毎月末日 / 支払日:翌月15日 / 銀行振込 |
ステップ4:従業員に説明し、署名・押印をもらう
雇用契約書が完成したら、採用する本人に内容を口頭でも説明することが大切です。書面を渡すだけでは内容が正確に伝わらないことがあります。特に、契約期間の更新基準や就業場所の変更の範囲などは、質問が出やすいポイントです。
説明の上で双方が合意したら、署名・押印(または記名・押印)をもらいます。
ステップ5:1部ずつ保管する
雇用契約書は2部作成し、会社控えと本人控えを1部ずつ保管するのが基本です。会社控えは、退職後も3年間は保管が必要です(労働基準法第109条)。
紙の書類が増えて管理が大変という場合は、雇用契約書の電子化も選択肢のひとつです。電子契約を導入すれば、作成・署名・保管をすべてオンラインで完結できます。具体的なツールについては、「電子契約ツール5選|中小企業向け機能・料金比較【2026年版】」で比較していますので、参考にしてみてください。
作成時のよくあるミスと注意点
実際にパート・アルバイトの雇用契約書を確認すると、以下のようなミスが多く見受けられます。自社の契約書に当てはまるものがないかチェックしてみてください。
| よくあるミス | 対策 |
|---|---|
| 有期契約なのに更新基準を記載していない | 更新の有無と、更新する場合の判断基準(業務量・勤務成績・会社の経営状況等)を必ず記載 |
| 就業場所・業務内容の「変更の範囲」が抜けている | 2024年法改正の対応漏れ。モデル様式を使えば項目が用意されている |
| パート特有の4項目が記載されていない | 昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口の4つは法定の必須項目 |
| 時給のみ記載して交通費の扱いを書いていない | 「支給なし」の場合もその旨を明記。曖昧にすると後日トラブルになりやすい |
| 有給休暇について触れていない | パート・アルバイトにも有給休暇は発生する。付与日数を記載するか、就業規則を参照する旨を記載 |
これらのミスは、正社員用のテンプレートをそのまま流用したり、法改正前の古い書式を使い続けている場合に特に起こりやすくなります。雇用契約書のテンプレートは定期的に見直す習慣をつけましょう。
なお、雇用契約書の管理や労務手続きを効率化したい場合は、労務管理クラウドの導入も有効です。「労務管理クラウド6選|中小企業向け機能・料金比較【2026年版】」で各サービスを比較していますので、あわせてご検討ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 雇用契約書は必ず紙で渡す必要がありますか?
いいえ。2019年4月の法改正により、労働者が希望した場合は、メール・FAX・SNSのメッセージ機能など、電子的な方法で交付することが認められています。ただし、労働者本人が確実に受け取れる方法であること、印刷して保存できる形式であることが条件です。口頭で「メールでいいですか?」と確認し、同意を得た上で送付するとよいでしょう。
Q. 契約期間の上限はありますか?
有期雇用契約の期間は原則として最長3年です(労働基準法第14条)。ただし、高度な専門的知識を持つ労働者や、満60歳以上の労働者については、最長5年まで認められています。パート・アルバイトの場合は、3年以内で設定するのが一般的です。
Q. 契約更新を繰り返した場合、いつか正社員にしなければなりませんか?
「正社員にしなければならない」という法律上の義務はありません。ただし、有期契約が通算5年を超えた場合、労働者には「無期転換申込権」が発生します(労働契約法第18条)。労働者がこの権利を行使すると、会社は無期雇用契約に転換する義務を負います。なお、無期転換は「正社員化」とは異なり、契約期間が「期間の定めなし」に変わるだけで、その他の労働条件は原則として従前のままです。
Q. 試用期間はどのように記載すればよいですか?
試用期間を設ける場合は、雇用契約書に試用期間の長さ(例:入社日から3ヶ月間)と、試用期間中の労働条件(賃金が異なる場合はその額)を明記します。試用期間中であっても労働基準法は適用されるため、解雇には正当な理由が必要です。「試用期間中はいつでも辞めさせられる」というのは誤解ですので、注意してください。
Q. 雇用契約書を作り直す場合、改めて署名が必要ですか?
はい。労働条件に変更が生じた場合は、変更後の内容を記載した書面を改めて交付し、署名をもらうのが望ましい対応です。法律上は変更部分の通知で足りますが、後日のトラブルを防ぐために、新しい雇用契約書を作成して再度取り交わすことをおすすめします。
Q. 外国人を雇用する場合、何か追加で注意することはありますか?
外国人を雇用する場合は、雇用契約書の記載事項に加えて、在留資格の確認が必要です。在留カードで就労可能な在留資格であることを確認し、「資格外活動許可」を得ている留学生の場合は週28時間以内の就労制限があります。また、雇入れ・離職の際にはハローワークへの届出が義務付けられています。可能であれば、雇用契約書を母国語または平易な日本語で併記すると、トラブル防止に効果的です。
※ この記事は法令の一般的な解説であり、個別の労務相談については社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
※ 当サイトの情報は公開情報に基づいて作成しています。正確性には万全を期しておりますが、最新情報は厚生労働省の公式サイトをご確認ください。

